図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      124  
     
   初夏つれづれ  
     
   田んぼに水が張られると、景色の輪郭がくっきりとして見えます。どこかぼんやりと霞んだ春から初夏へと季節が移ったのを感じます。そろそろタケノコ採りも本番と、ソワソワしている方も多いのではないでしょうか。

✿シーズン到来の前に

 さて、この季節にオススメしておきたい二冊をご紹介します。ひとつめは『羆嵐(くまあらし)』(吉村昭/著)。日本史上最悪の獣害事件として名高い、三毛別ヒグマ事件が元になっています。淡々とした筆致が却って緊迫感を高めるドキュメンタリー小説。自然の猛威を前にした人間の無力さを痛感させられる名作です。  もうひとつは『熊が人を襲うとき』(米田一彦/著)。元秋田県庁職員で、過去8回もクマに襲われた経験を持つという著者。地方紙に掲載されたクマ被害の記事を丹念に収集し、その事例からクマと出会ってしまった時の対処法を学ぼうとする一冊です。  山へ向かう皆様方はどうぞ気を引き締めて、くれぐれも無事でお戻りくださいね!


✿ 工作あれこれ

 多目的室に、ちょっと変わった手作りおもちゃを置いています。棒を手に持ってくるくる回すと、虹色に光るテープがふわっとシャボン玉のように広がります。回し方を変えるとひょうたん型になったり円盤型になったり。遊び方はシンプルながら、子どもも大人もつい夢中になってしまう、不思議な魅力のあるおもちゃです。都内の児童館で保育士をされていた方が考案したものだそうで、インターネット上で公開されている作り方を参考にして作成しました(興味のある方は「くるくるレインボーの作り方」で検索してみてください)。  これ以外にも、館内のあちこちを手作りのものが飾っています。特にノルマがあるというわけではないのですが、何せここは図書館ですので、参考になる本がたくさんあります。返却されてきた本を見て「これ作ってみたい!」と思うこともしばしば。そうして作ったものを飾っておいて、「同じのを作りたい、載っている本はどこ?」などと声を掛けて頂いた時は、心の中でガッツポーズをしています。半分趣味感覚で楽しくやりつつ、蔵書の貸出促進にもなるので一石二鳥!と思っています。


✿ 再会

 長く続いている人気シリーズで、ずっと未完のままだった『十二国記』(小野不由美/著)の新作が出るそうです。待望の新刊情報に熱量高く盛り上がるファンの反応からは、深く愛されている作品であることが伝わってきます。未読だったので、これを機会に読んでみようと思い立ち、比内図書館から取り寄せてみて…びっくり。忘れていたけど以前読んでました、一作だけ。シリーズの番外編になる『魔性の子』という作品で、なんでも『十二国記』の一部であることを知って読むか知らずに読むかでだいぶ受ける印象が違うものだったのだそうです。知らずに読んだ20ン年前、確かに読後置いてきぼりをくらったような、途方に暮れた気分に見舞われたのを思い出しました。これが番外編であることを踏まえ、改めて本編を読んでみると…めちゃくちゃ面白い。ページをめくる手が止まらないけれどすぐに読んでしまうのももったいない。そんなジレンマに陥りつつ、じりじり読みました。再会できて良かった。10月に2冊、11月に2冊発行予定とのこと、早くも今年の秋の楽しみができました。(栗盛・知)