図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      131  
     
   秋になりました  
     
   先月から19時に図書館を閉館して帰宅する途中に、子どもたちのお囃子の練習風景を見かけるようになりました。大館神明社のお祭りの活気が大好きで、山車を見かけるとわくわくします。それ以上に楽しみなのが、屋台を見て回ることです。いか焼き、綿あめ、焼きそば、と定番のものから、今年はタピオカ専門店など、毎年新しい屋台が出ています。屋台の食べ物ってどうしてあんなに魅力的なのでしょうね。お祭りの熱気と興奮が食欲を刺激するのでしょうか。


✿ ○○の秋

 大館神明社祭典が終わると、大館は本格的に秋になります。秋といえば「○○の秋」と言われますが、くまはもっぱら食欲の秋です(え、食欲は一年中でしょうって?はい、否定はしません)。実際に食べるのはもちろん好きですが、おいしく読める本も大好きです。  くまの中に『三大あこがれの食べもの本』というのがあります。  まずはバーネット作『小公女』の焼きたてのレーズンパンです。小中学校の頃、通学路にパン工場があり、帰り道などにパンの焼けるいい匂いがすると、『小公女』のパン屋さんの一場面が頭に浮かんできました。これまでにレーズンパンはいくつも食べてきましたし、出来立てのパンを食べる機会もありました。けれども、やはり本の中のレーズンパンが一番おいしそうなのです。  次はオトフリート=プロイスラー作『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズです。ホッツェンプロッツが作るどろぼう料理や、カスパールのおばあさんのドイツ料理がとてもおいしそうなのです。お話自体も三作ともおもしろいのですが、おもしろさに負けないくらい、おいしいものもりだくさんです。いつの日かドイツに行って、ホッツェンプロッツの店で料理を堪能したい。カスパールの家にお邪魔しておばあさんの手料理を味わってみたい。これがくまの夢です。  そして大トリは、何といっても中川李枝子作『ぐりとぐら』のカステラです。りょうりをすること、たべること、が大好きなのねずみのぐりとぐらが森を歩いていて大きなたまごを見つけます。その大きなたまごで大きなカステラを作ります。そして森のみんなと一緒に食べるのです。くまのイメージとしては、カステラというよりホットケーキを連想してしまうのですが、どちらにしてもおいしそうなのは変わりません。やはり、どんなカステラにも敵わぬ魅力を持っているのです。


✿ 見果てぬ夢と本の楽しみ

 この『三大あこがれ食べもの本』は、手が届かないから、自分好みの味を思い描きながら読んでいるから、それは究極にして至高の一品になります。哀しいかな、頭の中での一品なので、実際に味わうことが出来ません。でも本を開くたびに、ぐりとぐらの歌を聞きながら、森の中をいい匂いでいっぱいにするカステラを食べる気分を味わうことができます。いつの日かぐりとぐらやホッツェンプロッツに会えることを願いながら。  ひとつ注意点。本当におなかが減っているときにこういう本を読んではいけません。食べたさのあまりに、本にかじりついてしまいかねませんから。(栗盛 くま)