図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      161  
     
  師走を行く  
     
   カレンダーも残り1枚、12月になってしまいました。今年を振り返る月なのですね。ある年には大雪になった12月、またある年には仕事納めまで雪のない12月がありました。はてさて今年の寒さは「平年並み」という予報ですが、どうなりますやら。
今年の図書館はコロナに振り回された一年と言っても過言ではありません。事業のほとんどがストップ!休館という事態もありました。子どもたちに人気の事業が少なかったのが残念です。
先月「詩」という今まで取り組むことの少なかった分野の「犬の詩朗読会」を開催できたのが、コロナ禍での私にとってはうれしい出来事だったでしょうか。ドリアン助川氏と管啓次郎氏の「詩のバトル」でした。仕事を忘れ、どっぷりとその世界に浸ってしまいました。
管さんは大館で詩を9篇書き上げ、『「水牛のように」12月号』に「犬の詩9篇 大館のために」としてその時の詩が掲載されています。1篇を紹介します。

✿ついてくる
犬がついてくる
どこまでもついてくる
きみが行くところならどこだって
山も川も越えて
森を抜け町をさまよって
よろこんでついてくる
何も求めず
文句もいわず
ついてくるのがうれしくて
きみと歩くのが楽しくて
立ち止まって匂いをかぐ
耳をすます
また歩き出してどんどん進む
行先にこだわらない
困難にひるまない
あらゆる瞬間が発見
すべての道が冒険
犬がついてくる
いつまでもついてくる
この地上での
きみの旅を
見届けるために

✿図書館とは。。。
何度聞かれても、何度考えても答えは一つではないように思います。少なくともいえることは、私たちは「無料の貸本屋」と揶揄されるような図書館にはならない、ということでしょうか。
売れ筋といわれる本がないと利用者の方が図書館に足を運んでくれない、かといって売れ筋ばかりを置いておけば事足りるのか、そうではないと思います。利用者の方の読みたい本と、図書館員の読んでほしいと考えて選書したもののバランスがうまくいっていれば、来館者が増えていくのでしょうか。限られた予算の中でせっかく選書したのに一度も借りられることのない本もあります。でもそれはきれいなままではないので、図書館の中で手に取ってもらっている、読まれている、と信じています。
知人が、図書館は「人類の知恵が本の形になって、その本がたくさん集まっている場所」と話していました。では、その図書館をどうしていくのか。難しいですね。調べる図書館、物がたりを紡ぐ図書館、人とのつながりを紡ぐ図書館、言葉としては出るものの難しいです、皆さんはどうお考えでしょうか。

✿ごぞんじですか?「わいわい文庫」
「絵文字より あなたを感じる その癖字」ティーバックにあった句です。手紙を書くということがとんと少なくなりました。でも本に関しては、特に辞書類に関しては紙媒体がいいと考えています。ですが、ほとんどの本は明朝体のような文字で、読むことに障がいのある人にとっては読みづらいもののようです。
「わいわい文庫」は、公益財団法人 伊藤忠記念財団が提供しているもので、読むことに困難を抱える人にも本を届けるために「すべての子どもたちに読書の喜びを!!」を目指し、全国各地のボランティアが校正に関わり、年間80~100のタイトルがデジタル図書になっています。栗盛記念図書館にも1タイトル1枚のディスクでおいてあります。全国の民話もあり、秋田県版は「田沢の辰子」が何ともかわいい絵で、方言で収められています。
ただ、難点があります。本の背表紙に当たる部分が狭いため、利用したいご本人が探すのはとっても難しいです。一覧もありますがそれも見にくいと感じるかもしれません。その時は気軽にカウンターの職員へお声がけください。お手伝いさせていただきます。
今年の校正作業は11月に始まったので、今年は少ないタイトル数かもしれませんが、来年度図書館の蔵書として増えていきます。宝の持ち腐れにならないように、多くご利用いただけたらと思います。
さて、今年も残り半月、皆さんはどう過ごされますか?忙中閑あり、本を傍らに置いていただけたら幸いです、でも本に没頭して仕事が進まない危険があるのでご注意を!(保)