図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      165  
     
  季節はもう春  
     
   立春は二十四節気の第1で、冬が極まり春の気配が立ち始める日。『暦便覧』は「春の気立つを以って也」と記されているという。前回のコラムにあったように今年の立春は2月3日。暦の上ではもう春なんですね。とはいうものの実感する季節は冬がまだまだ続きますが、図書館にいて1月に白鳥の声を聞いた日がありました。早い北帰行でしょうか。だとしたらうれしいのですが、本当に今年は春が待ち遠しく感じます。

✿方言について
本紙「一筆啓上」で方言について書かれていたことがあり、偶然にも方言への翻訳?をした直後だったので、興味深く読ませていただきました。我が娘たちもかつて父親の書く方言の多い脚本に対して「意味わからないから観に行かない」と拒否反応を示した時期があったのを思い出し、今の子たち(という表現をすること自体年をとった証拠でしょうか)は、ほとんどの子が東京弁でしゃべることができることに気づきます。テレビの普及、ネットの普及が要因でしょうか。
秋田県の方言といっても県南、中央、県北でも場所によって違いがあります。「ボダッコ」という言葉を結婚して初めて知りましたし、「ホジ」はなくすのか落とすのかの話を職員が調べてくれたこともありました。
前述の翻訳は詩でタイトルは「めんこいしょ」。北海道の先生からの依頼でしたが、北海道は全国から開拓者が集まっているところで、ここと同じものがあったりします。翻訳は職員にもお願いしました。私よりも若いのですが私の知らない言葉が一つありました。それが「カマネゴ」。原文を知っているので意味が分かりましたが、口語文を文章にする難しさがありましたが、楽しい作業でした。

✿追悼コーナー
著名な(基準があいまいかもしれませんが)作家さんが物故されたことがわかると、栗盛記念図書館では追悼コーナーを設けています。1月は半藤一利さんと安野光雅さんのコーナーを設けさせていただきました。
半藤さんの「ノモンハンの夏」はかなりボロボロになっていて、多くの方に読まれたことが察せられます。半藤さんは東京大空襲の経験を「焼けあとのちかい」という絵本(塚本やすし絵)で残されました。大館での講演を考えたときに、骨折されてからはタクシーで行ける会場以外の公演はお断りしていると聞き、せめて都内の図書館で企画した講演会にと思っていてのコロナ禍。実現できずとても残念です。
安野光雅さんの絵は安野ファンの方からお借りしている色紙が常時多目的室に並んでいますが、今回は6枚の色紙と絵本が書架の上に並んでいます。今年の安野さんのカレンダーのタイトルは「洛中洛外」、京都御所の花が描かれています。個人的に好きな絵本は「ふしぎなたね」。人生訓と算数の面白い本です。もう一冊「10人のゆかいなひっこし」。本文には文字がありませんが、「まず この ほんを おしまいまで みて ください。」という文が最初にあります。何頁かめくっていくと。。。
心からご冥福をお祈りいたします。

✿読書をみんなのものに
図書館では、読むことに困難を抱える人にも読書を楽しんでほしいと考えています。
栗盛記念図書館には大活字本や、数は少ないもののLLブックというやさしく読める本が多目的室に置いてあります。写真が多く、ピクトグラム(絵文字、絵言葉)の記載があり、分かりやすいのが特徴の本です。LLブックは日本で発行されている本が少ないのですが、できる範囲で充実させていきたいと考えています。
そしてわいわい文庫があります。わいわい文庫は1タイトル1枚のディスクになっている電子図書です。都内では特別支援学校で活用されていると聞きます。自分のペースで、自分に合った速度、大きさで読むことができます。
わいわい文庫の中には「小倉百人一首」もあります。これは特別支援学校に通う中学1年の子から「百人一首を楽しみたいので、電子化してもらえませんか」というお願いから始まり、大勢の力を集めて出来上がったそうです。また「日本昔話の旅」も47都道府県分あり、秋田県は「田沢の辰子」ですが、2巡目に入っている県もあり、もしかすれば希望を出せば第2弾がかなうかも、と思っています。
さて、春は名のみの平年並みとはいうものの冬が続きます。暖かくなって外に出られるまでの間、コロナ禍でもありますし、今一度、読書することで心の栄養を蓄えてみませんか?職員一同、お待ちしております。(保)