図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      172  
     
  お探し物は…  
     
   ✿『お探し物は図書室まで』
  先日発表された今年の「本屋大賞」、2位に選ばれたのは『お探し物は図書室まで』(青山美智子/著)でした。仕事や人生に悩みを抱えた人たちが、ふと訪れた小さな図書室。レファレンス担当の司書、小町さゆりからすすめられた本と、手渡された“付録”をきっかけにして自分自身を見つめ直していくお話です。
 図書館司書としては小町さんに我が身を重ねてみたいところですが、むしろ相談者の抱えるモヤモヤの方が身につまされました。年代も性別も境遇もばらばらな相談者たちなのに、それぞれにどこかしら「わかる」ところがあり、どの登場人物もいつの間にか自分のことのように思えてくるのです。そんな彼らの背中を押してくれる本は全て実在のもの。ほっこりした気持ちで読み終わったら、さらに本を読みたくなる一冊でした。

✿あの本が見つからない、と思ったら
  さて、図書館での探し物といえば。読みたい本があって図書館まで来てみたけれど見つからずに帰った、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に所蔵していない場合もありますが、「貸出中」で一時的に見当たらないだけだったり、時には「覚え違い」によって、本当はあるのに見過ごされている可能性も。
 実は、そんな「覚え違い」で探された本のリストが存在します。福井県立図書館のホームページに掲載されている「覚え違いタイトル集」。2007年に始まって以来随時更新されており、リストとはいえもはや読み物と呼べそうなボリュームと面白さです。今、確認のために見てみたら最新の更新分に『お尋ね者は図書館まで』とあり、実にタイムリーでした。いくつか他にもご紹介しますと、
『あだしはあだしでいぐがら』→『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子/著)
『滅びた後のシンデレラ』→『滅びの前のシャングリラ』(凪良ゆう/著)
フォカッチャの『バカロマン』→『デカメロン』(ボッカチオ/著)
といった具合です。正誤表のような書き方になってしまいましたが、実際のリストの見出しは「覚え違い?」に対して「こうかも!」となっています。本当に覚え違いだったのか、行きついたタイトルが本当にお求めの本だったのか、断定しない表現です。図書館での探し物の、一筋縄ではいかないところがうかがえます。

✿覚え違い、聞き違い
  カウンターにお尋ねのあった本で、個人的に思い出深いのは『火花』(又吉直樹/著)です。テレビでよく見る芸人さんの直木賞受賞作という話題性から、特にお問い合わせが多かったこの一冊。『花火』との覚え違いや「マタキチの書いた本」(マタヨシさんですね)と言われたりもしましたが、一番の理由はそれではなく。恥ずかしながら「へばな」と聞き違えて脳裏に超神ネイガーがよぎり(彼はツイッターで投稿の最後をよく「へばな」で締めているのです)、ご当地ヒーローの本か秋田弁の本かな?と思ってしまったことがあったからです。すんでのところで間違いに気がついてことなきを得ましたが、思い出すと冷や汗が…。
 こんなおっちょこちょいもいますが、お探しの本があればカウンタースタッフは全力でお手伝いします。うろ覚えでも構いませんので、どうぞお気軽にお尋ねくださいね。 (栗盛・知)

✿訃報
 栗盛記念図書館後援会(発足当時は中央図書館)の初代会長で、会長退任後も顧問としていろいろな場面で図書館を支えてくださいました髙橋禎三氏がご逝去されました。職員それぞれに先生との様々な思い出があったりいたします。  職員一同、心よりご冥福をお祈りいたします(合掌) (保)