図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      188
 
     
  新たな本との出会いがありますように 
     
   移動図書館車「おおとり号」からも、新年のごあいさつを申し上げます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

✿おおとり号と子どもたち
  小学校や児童センターでは、元気なあいさつとともにたくさんの子どもたちが乗り込んで来ては本を借りていきます。 子どもたちからの質問で一番多いのが「何冊借りられますか?」というもの。 「10冊ですよ」と答えるとさあ大変! 何が何でも10冊借りていかねば!という子がどのステーションでも一定数います。 「2週間すればまた来るから、そのときまでに読みきれる数の本を借りてね」 と言うのですが、とにかく10冊借りたくなるらしくバッグをパンパンにして自慢げな様子はとても微笑ましいものです。たくさん借りてもらえるのは図書館としても具体的な数字となって大変ありがたいことです。
 ただ、少しだけ心にひっかかるのは、ゆっくり考えたり楽しんだりして物語を味わうことができているかしらということ。2週間で10冊だから、サラサラと読めるものをすっ飛ばすように、やっつけるように読んでしまおうとしていないかということです。
 実はおおとり号の乗降口には小さな張り紙があります。そこには、
「よみやすい本を
 たくさん よむのもいいけれど、
 ちょっとむずかしい本を、
 ゆっくり よむのも
 いいと おもいますよ」
と書かれてあります。
  おおとり号から借りて読んだ本からお気に入りの一冊を見つけてほしい。そこから広がる読書体験を通して、豊かな人生を歩んでほしいと願います。

 ✿劉慈欣(リウ=ツーシン/リュウ=ジキン)の本あります
 現代中国SFの金字塔といわれる「三体」という小説をご存じでしょうか。選書を担当してはいるものの個人的にSF作品は詳しくありませんし、おおとり号の貸出傾向を見てもあまり読まれないため、なかなか購入に踏み切れないジャンルでしたが、2019年7月の発売時SNSが大盛り上がりで、これはハズレないだろうと所蔵を決めました。そうして読んでみました。
  物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔。彼女の絶望がすべての始まりだった…人類の危機が描かれます。地球が三体文明に侵略されるのです。スケールが大きすぎてぶっ飛びます! 正直に告白しますと天文学も物理も数学も苦手なので難しくはあります。しかし物語が面白すぎて目が離せなくなりました。地球は、人類はどうなってしまうのでしょう!? 作者の劉慈欣は1963年中国山西省生まれ。
  「三体」から「三体Ⅱ黒暗森林 上・下」(2020年)、「三体Ⅲ死神永生 上・下」(2021年)と続きます。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長編部門に輝く、現代中国最大の衝撃作です! おすすめします。 また「円」という短編集も所蔵しました。長編はちょっと…という方はこちらからいかがでしょうか。新たな読書のドアが開かれます。おおとり号の本もご予約いただけます。どうぞご利用ください。(昌)