図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      194
 
     
  明けない夜はない!!  
     
   今年の冬は本当に大雪で、降っても降ってもこれでもかと言わんばかりに雪が降り続け、この雪はいったいいつになったら融けるのだろうか…そして春はいつになったらくるのだろうかと思いました。そのうえ、かなり下火になり減少を続けていたコロナウイルス感染症も、正月過ぎから今までにない速度で増え続け、「やっとコロナも収束か」という期待は見事に裏切られ、雪の重さに増して重くのしかかりました。しかし、3月も終わりに近づき4月になったら、あの大量の雪が嘘のように融けていきました。「お日さまの力ってすごいな」と実感させらるとともに、やっぱり「明けない夜はない!」この言葉が頭に浮かびました。そこで、今回のテーマは「明けない夜はない」です。今起こっているいろんなことが、暗闇から明るい未来が開けることを願って、この言葉に関連した本を紹介してみたいと思います。

✿『マクベス』(静山社)ウイリアム・シェークスピア・原作 斉藤洋・文 佐竹美保・絵  「明けない夜はない」という言葉は、戯曲『マクベス』の中のセリフが由来とされる説があります。『マクベス』は、将軍マクベスが妻とともに主君を暗殺して王位につくものの、暴君となり果て殺される話です。その中でマクベスに対抗する軍の長・マルカムの台詞が、「The night is long that never finds the day」…この日本語訳が「人生において、悪い状況ばかりがずっと続くわけではない」という意味の「明けない夜はない」になったとされています。シェークスピアの戯曲というと、堅苦しいような感じがしますが、物語で読むシェークスピアシリーズとして、とても読みやすくなっています。その他に『ロミオとジュリエット』などほかの作品もありますので、是非手に取ってみてください。

✿『明けない夜はないから』(フェリシモ)宮城県の子どもたち+荒井良二・絵 たかはしあきら+新田信一郎+渡辺リカ・ことば この本は2011年3月11日14時46分に発生した、東日本大震災の後、被災地宮城県で生まれた歌「明けない夜はないから」をもとにして作られた絵本です。あれから11年の歳月が流れ、被災された方々の気持ちの中には、あの時の苦しみ・辛さはまだまだ残っているとは思います。しかし、それを乗り越え前を向き、復興は進んでいます。当時の子どもたちが書いた文と、現在の状況を思い浮かべると、まさに「明けない夜はない」という言葉を身をもって実感します。

✿『てぶくろ』(福音館書店)ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ・絵 内田莉莎子・訳  現在暗闇の真っただ中にあるウクライナ…早く夜明けがくることを願って、長い間読み継がれてきたウクライナ民話『てぶくろ』を紹介します。この本は雪が降り積もる森の中で、おじいさんが手袋を片方落としたところから始まります。その手袋を見つけた動物たちは、次々とその手袋に住むことになるのですが、「私も入れて」…「いいよ」どんどん増えていく動物たち…そして手袋はどんどん狭くパンパンになっていきます。この動物たちのように、相手を思いやり受け入れる気持ちを持っていたら戦争は起こらないと思います。戦争によって日常が奪われた人々に、早く夜明けが訪れ、子どもたちがゆっくり絵本をめくれる時間が訪れることを願うばかりです。 おすすめの本を3冊紹介しましたが、ほかにもいろんなジャンルの本がたくさんあります。是非一度図書館へ足をお運びください。スタッフ一同皆さんのご来館をお待ちしております。 (田代 安)