図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      200
 
     
  読書の夏に!  
     
   今年は季節を先取りしているかのように感じています。5月も急に真夏日があったり6月には猛暑日も…。梅雨入りも早く、このままではあっという間に夏も終わってしまうのではないかと…。そんなことはないとは思いますが。まだまだこれから夏を十分に満喫したいですね。

「ブックスタート」知っていますか?
 市立図書館では、大館市福祉部健康課と連携し、幼い頃から絵本に親しむきっかけづくりのため 「ブックスタート」を実施しています。地域に暮らすすべての赤ちゃんと保護者に、絵本で心ふれあうひとときを届けることが、ブックスタートの役割です。5か月児すこやか教室に不参加の方は、4か月児健診の 際に配布されたチケットと引き換えに図書館で絵本を受け取ることができます(期限あり)。今年度の引き換えの本は『ぎったんばっこん』ですが、同じ本を既にお持ちの方は何冊か他の本も用意しているので、お好きな本を選ぶことができます。是非ご利用ください。

大人におすすめの絵本
 絵本には見るだけでも癒しの効果があったり、新たな「教え」や「気づき」が得られることもあります。そこで大人におすすめの絵本を少しご紹介したいと思います。

◎『ちょっとだけ』瀧村 有子/
 赤ちゃんが生まれてお姉ちゃんになったなっちゃんは、お母さんにお願いしたいことがあっても、赤ちゃんのお世話で忙しそうなお母さんを見て自分で頑張ってやろうとします。でも眠くなった時だけはどうしてもお母さんに甘えたくなります。遠慮がちに「ちょっとだけでいいからだっこして」と言います。お姉ちゃんになったことで感じる切なさとそれを乗り越えることで成長していく子どもの姿を、母親の愛情とともに描かれています。
育児書だけではなく絵本にも大切なことが書かれていることを気づかせてくれます。

◎『二番目の悪者』林 木林/作  庄野 ナホコ/
 「これが全て作り話だと言い切れるだろうか」この一文から始まります。金色のたてがみを持つ金のライオンは一国の王になりたかった。ところが、街はずれに住む優しい銀のライオンが「次の王様候補」と噂に聞く。金のライオンは自分の都合の良いように嘘の悪い噂を流す。悪い噂は少しずつ広まりやがて街中に広まる。噂を広げる動物たちは、どこにでもいるような普通の仲間。心配性だったり、おせっかいなだけで、自分が「二番目の悪者」だなんて思ってもいない。「嘘は向こうから巧妙にやってくるが、真実は自ら探し求めなければ見つけられない」SNSの発達した現代社会の今、考えさせられる一冊です。

「ドキュメント日記シリーズ」
 三五館シンシャ刊行の働く高齢者の日常を軽妙に描く「ドキュメント日記シリーズ」が人気です。『交通誘導員ヨレヨレ日記』柏耕一著、『非正規介護職員ヨボヨボ日記』真山剛著、『ケアマネージャーはらはら日記』岸山真理子著などが出版されています。どの本も表紙の絵にインパクトがあります。『タクシードライバーぐるぐる日記』内田正治著は50歳で失業、以降15年間にわたってタクシードライバーとして勤務した著者による、怒りと悲哀と笑いの日々を綴っています。年老いた母親が知人に「息子とドライブするのが楽しみ」と言っていたことを母親が亡くなった後で知った話がほろりとさせられます。一日16時間ハンドルを握っていて「休みにはハンドルを見るのも嫌だ」と漏らしていたからです。母親はそれを知り2度とドライブをねだらなくなりました。母親の想いが切なくなります。
 タクシー業界の裏側を知れるだけではなく、様々なお客とのやりとりやメンタルの保ち方など自己啓発本にもなりうる一冊です。他にも『ディズニーキャストざわざわ日記』笠原一郎著、『コールセンターもしもし日記』吉川徹著など多数あります。「ドキュメント日記シリーズ」一読されてはいかがでしょうか。
 まだまだ暑い日は続きますが年々最高気温も上がっています。暑い日には無理をして出かけずに熱中症予防のためにも涼しい所で読書を。秋の夜長まで待たずに「読書の秋」ではなく「読書の夏」と先取りしてみませんか。(比内 久)