図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      212
 
     
  まもなく2月  
     
   早いもので、1月の終わりが近づいてきました。もうすぐ節分がやってきます。文字通り「季節を分ける日」ということで、冬はこの日で終わり、翌日は春の始まりとされる日=「立春」です。もちろん「暦の上では」と但し書きが付きますが。


✿節分といえば
 昨年の春頃に成章小へお邪魔した際、図書室で会った低学年の子どもたちが「オニタロウはどこかなー!」「オニタロウ読もうっと!」と口々に言いながら、チラチラとこちらの反応を伺っている様子。ピンときた方もいらっしゃるでしょうか。十二所保育園出身の子どもたちでした。

『オニタロウ』こさかまさみ・文 北村人・絵(福音館書店 2021)
主人公はカキの木山に住むオニの「オニタロウ」。父さんオニが怖くてつい「30人の子分がいる」と嘘をついてしまいました。心優しいオニタロウに子分なんて本当は一人もいません(動物のともだちはたくさんいるのですが)。父さんオニに子分を会わせることになり、困ってしまったオニタロウ。山ひとつ向こうの町にある「たけのこえん」の人間の子どもたちを子分にしようと考えて、園に挑戦状を届けます。「相撲で勝負して勝てなければみんなおれさまの子分になれ」という、「オニの親分」を名乗る者からの挑戦状。これを受け取った子どもたちの反応は…。
 この「たけのこえん」に届く挑戦状が、十二所保育園が節分に合わせて貼り出す「鬼からの手紙」をモデルにしたものなのだそうです。十二所保育園出身の子どもたちが『オニタロウ』を自分たちの本だと思って大事にしているのが伝わってきて、ほっこりと心和んだ出来事でした。
 元気いっぱいな人間の子どもたちと、気は弱いけれど優しいオニのお話『オニタロウ』。節分に合わせて読みたい一冊です。


✿節分におすすめの絵本をもうすこし
『おにたのぼうし』あまんきみこ・文 いわさきちひろ・絵(ポプラ社 1969)
『ちびっこちびおに』あまんきみこ・文 わかやまけん・絵(偕成社 1975)
 あまんきみこさんのオニの物語といえば、名作『おにたのぼうし』を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。いじらしくも哀しいおにたの物語は、そのやるせない結末に胸を絞られます。『ちびっこちびおに』もまた、主人公であるオニの子どもが正体を隠して人間に近づくお話ですが、その後の展開は全く別のものでした。圧巻なのは、人間の子どもたちとちびおにが一緒になって遊ぶシーン。文字が一つもないまま、見開き3ページにわたって、ちびおにと楽しそうに遊ぶ子どもたちの様子が表情豊かに描かれています。今にも子どもたちの歓声が聞こえてきそう。挿絵担当のわかやまけんさんといえば「こぐまちゃん」シリーズのパキッとした色遣いが印象的ですが、大きく作風が異なって柔らかなタッチの水彩画です。これが同じ作家の手によるものかと驚かれるのではないでしょうか。
 『おにたのぼうし』と『ちびっこちびおに』、合わせて読んでみるのもいいですね。どちらも図書館にありますので、どうぞご利用ください。(栗盛・知)