図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      214
 
     
  「東洋文庫を読んでみませんか?」  
     
 

栗盛記念図書館の正面入り口からすぐ左へ
 さらに次の角を左に曲がり「岩波新書」の書架を通り過ぎ、奥へと進むと「東洋文庫」のコーナーです。
深緑に金色のタイトルがずらりと勢ぞろい! ですが、なんとなく地味。
しかしそこはなかなかのディープゾーン。本日はこちらをご紹介いたします。


「東洋文庫」って何?
 東洋文庫(平凡社)の特色は解説目録によると、
1、日本・中国・朝鮮・インド・中央、西アジアを含む、アジアの古典・名著を一大集成するクラシック・ライブラリー。
2、古代から現代までの、単に著名な古典だけでなく、埋もれていた価値ある文書を発掘する。
3、文学・歴史・思想・宗教・芸術・探検・紀行・自然科学などの各分野にわたるほか、外国人の見たアジアおよびアジアに関する研究書なども含める。
『アジアの先人たちが築きあげてきた文化は、今なお脈々として私たちのなかに生きているのです。しかし、近代以降、西欧文明に馴れ親しんできた私たちにとって、アジアの文化や古典は、“むずかしいもの”“とりつきにくいもの”と思われがちでした。けれども、それらの古典の内容は、読み解いてみれば、じつに興味ぶかい思想をもち、また尊い人間の記録として、私たちを感動せしめるのです』(刊行のことばより)


そのタイトルは
 『本朝食鑑』、『甲子夜話』、『酉陽雑俎』、『夢渓筆談』等々…見馴れない文字がならびます。
『韃靼漂流記』、『魯迅「野草」全釈』、『通俗伊勢物語』、『詰むや詰まざるや』(将棋ファンならご存じ)、『アラビアンナイト』などはとりあえず内容を想像できますが、『マカーマート』、『ライラとマジュヌーン』、『ヤージュニャヴァルキヤ法典』、『ナスレッディン・ホジャ物語』…耳なじみのないもの多数です。
 ですが皆さま! ここで何が書いてあるのだろう? と本を手にとってみたときから、新しい読書が始まるのではないでしょうか。


現在「東洋文庫」は900冊以上
 栗盛記念図書館ではそのほとんどを所蔵しています。
 たとえば『インドの驚異譚』は、10世紀にインド洋を航海した船乗りたちから蒐集した奇想天外な説話の数々です。人魚の住む島、お化け蟹、空飛ぶ大蛇?! わくわくしませんか?
 また『世界最古の物語』は旧約聖書やホメロスの叙事詩よりはるか以前、4千年前に近東の人々によって語られていた物語です。粘土板に残された古代の物語を復元・解説してわかりやすく語りなおしたものです。
 旧約聖書を読むと、しばしば神に背いてバアルを信仰し堕落していく民が描かれますが、そのバアルについても詳しい記述があります。
 多種多様なアジアが「本」になっています。
 そして、我らが『菅江真澄遊覧記』、イザベラ・バード『日本奥地紀行』、安藤昌益『稿本自然真営道』も「東洋文庫」にあるのです。
 そんなアジアのディープゾーンへ、足を踏み入れてみてはいかがでしょう。(昌)