もうすぐ六月ですね。六月と言えば、梅雨・雨・じとじと・じめじめ…とくれば、やっぱり怪談!雨と怪談の取り合わせも外せません。肌にまとわりつくような湿気が、気分を盛り上げてくれます。今回は雨にまつわる怪談を紹介します。また怪談か、なんて思わずお付き合いください。
●雨と言えば
「雨の鈴」『営繕かるかや怪異譚』小野不由美/著より
雨と言うと真っ先に浮かぶのがこのお話です。とある古い城下町の小路に、雨の日だけ鈴の音を伴って現れる黒喪服姿の女。彼女は何者なのか。なぜ現れるのか。どこへ向かっているのか。
『逢魔宿り』三津田信三/著
雨が降り出しそうな日、散歩と原稿読みの仕事を兼ねて立ち寄る四阿に珍しく先客がいた。それは怪談じみた話を語り、その後には聞いた話とどこか符合する事件が近辺で起こる。それ以来、雨の日になると、待ち受けるかのように四阿に現れる。あれらは一体何者なのか。
「関わるな」『夜行奇談 』東亮太/著より
気心の知れた仲間とイベントに参加した男性。その帰り道で、雨の日に傘もささずに佇む、ずぶ濡れの女をみつける。酔った勢いで傘を貸したあげく、「うち来る?」なんて言ってしまったばかりに……。
こうしてみると、雨の怪談は付いて来る話が多いような気がします。雨の日に付いて来るというと、妖怪にもそんなのがおりますので、そちらも紹介させてください。
●雨と妖怪
雨の日に現れるといえば、豆腐小僧です。雨の夜に現れ、人のあとをつけて歩くこともあるとされる子どもの姿をした妖怪です。何をするというわけではないが、その豆腐を食べると全身にカビが生えるのだとか。京極夏彦とせなけいこ作の絵本がそれぞれあり、題はどちらも『とうふこぞう』です。同じく雨の夜に現れる妖怪では、すねこすりがいます。岡山県に伝わる妖怪で犬のような姿をしており、夜道を歩いていると足の間をこすりながら通り抜けるとされています。毛並みがモフモフなのかどうかが気になります。
他にも雨の日に現れる妖怪では、雨降小僧という妖怪もいます。こちらは神様に仕える子供で、雨を呼ぶとされています。頭に傘をかぶり、提灯を持った姿で描かれます。『東北怪談の旅』山田野理夫/著には、狐に頼まれた小僧が提灯を降ると雨が降り出したという話があります。どの妖怪も一度でいいのでお会いしてみたいです。
●……雨??
「旧青木邸の怪談会」『田舎怪異百物語』郷内心瞳/著より
宮城県で拝み屋を営む著者が、怪談会に立ち会ってほしいと依頼を受けた先での出来事。会が始まると同時に降り出した雨は、やがて土砂降りへと変わっていく。だが、終わってみるとどこにも雨の跡など無かった。会の最中降り続いていた雨はいったい何だったのか。
この雨のようで雨ではないものが降る話は、三津田信三の『どこの家にも怖いものはいる』にも登場します。以前紹介した幽霊屋敷怪談の一作目ですので、気になった方はこちらもご一読ください。
紹介したい話はまだまだありますが、長くなるのでここまでにします。これからも折に触れては怪談を薦めていきますので、お付き合いください。(花矢 藤)
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