図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      261
 
     
  本にまつわる話  
     
 

本のある空間
 山形県鶴岡市に、スイデンテラスというホテルがあるのをご存じですか?コンセプトは“晴耕雨読の時を過ごす、田んぼに浮かぶホテル”で、建築家の坂茂(ばんしげる)氏が手がけたことで知られる絶景宿です。
 景色がいいだけでなくこのホテルにはライブラリーがあり、計二千冊もの本が並べられています。この空間を手がけたのはブックディレクターの幅允孝(はばよしたか)氏です。もちろん滞在している間に全て目を通せるわけもなく、以前利用した際に本のリストをもらえないか聞いてみました。答えは残念ながら「NO」。つまり、訪れたその時の本との出会いを大切にしてほしいというコンセプトなのだろうと解釈しました。
 本自体も好きですが、本がたくさん並んでいる光景や本のある空間が好きだなぁと思います。この他にも、菓子店「北菓楼 札幌本館」のカフェには天井に届くぐらい、壁面いっぱいに本が並んでいて、それ見たさにわざわざ行ったこともあります。その建物はもともと大正15年に旧北海道庁立図書館として建てられたもので、建築家の安藤忠雄氏の手により現在の姿に生まれ変わったのだそうです。書架を見たところ北海道の郷土資料がたくさんありましたが、一見関係ないようなものもあり、誰がどういった基準で選書したのか気になるところではありました。
 あとは、いつか行ってみたいのは「箱根本箱」というブックホテルですね。本に囲まれて「暮らす」ように滞在できる場所。本と人との出会いの場。ここで買えない本はないのだとか。最高すぎます。


本にまつわる物語
 図書館や書店、あるいは本そのものをテーマに扱った本がありますが、いくつかご紹介したいと思います。

『金曜日の本屋さん』シリーズ(全4冊)/名取佐和子・著
 “読みたい本が見つかる本屋”と噂の駅ナカ書店「金曜堂」を舞台に、人と本との出会いを描く心温まる物語。出てくるのは実在する本ばかりなので、読みたい本が増えて困ってしまうかもしれません。


『税金で買った本』(既刊13巻)/ずいの・原作
 当館では所蔵していませんが、図書館勤務経験者が原作者の図書館お仕事漫画です。
 男子高校生でヤンキーの主人公、石平は図書館で本を借りようとしますが10年前に借りた本を返却していないことにより、図書館から利用者カードの発行を拒否されます。弁償を要求された彼は、大昔の出来事なので時効だろうと逆ギレしましたが、職員から税金で買った本の大切さを諭され、結局書店で購入して現品を持ち込み弁償します。無事に利用者カードを発行してもらった彼は読書の面白さを思い出し、図書館に通うようになり、さらには図書館でアルバイトをするようになります。
 「図書館お仕事あるある」がたくさん詰まっていて、図書館を良く知る人にも知らない人にも面白い作品です。


『積ん読の本』/石井千湖・著
 この本はブックレビュアーの石井千湖氏が、本読み12人の「積ん読」事情を探る取材を敢行し、まとめたインタビュー集となっています。個人的には池澤春菜氏の本の読みかたが印象的でした。カメラのシャッターを切るように読んでいくそうです。早いだけでなく誤植にも気づける正確さ。池澤氏にとっては積ん読とは積んだまま読めない本ではなく「いずれ読む本」。呼吸をするように、貪るように読む生活がとても羨ましい気持ちになりました。


ふたりのももたろう
 『ふたりのももたろう』という絵本があるそうです。私たちがよく知る昔話の桃太郎がもし鬼に育てられていたら?という新たな視点から描かれているもので、物事の二面性を知り自分と異なる立場から考えるきっかけに、という目的で作られたとのこと。
 2月19日(水)の午後1時から2時まで、「図書館でホッとタイム」の一環で「大人のためのおはなし会」を開催いたします。テーマは「多様性」。読み聞かせボランティアサークルおはなしの森の皆さんを講師に、『ふたりのももたろう』のペープサートやサトシンさんの絵本『わたしはあかねこ』の読み聞かせなどを予定しています。会場は栗盛記念図書館1階の多目的室。入場無料。事前申し込みは不要です。鬼に育てられた「おにのこももたろう」がどうなるのか、ぜひ会場でご覧ください!(栗盛・西)