図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      262
 
     
  東風吹かば、春の気配  
     
 

門出に福あり
 春の訪れが待ち遠しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。先日のアメッコ市も晴天に恵まれ、日一日と日差しに暖かさが感じられる中、まだまだ寒い時間帯も続く時節柄、体調を崩されませんようお気を付けください。
 来月は年度末の繁忙期、合格発表や卒業式、新生活の準備などで慌ただしい時期ですね。他方へと引っ越しを控える皆様も、最初は環境の変化に不安が募るかもしれませんが、新たな門出が健やかで実りの多いものになりますよう、心から応援させて頂きます!


知識にも春の彩りを
 きたる3月3日は「桃の節句」、女の子の健やかな成長を願う「ひなまつり」です!春の華やぎに寄り添う雛人形、その存在意義が愛らしい見た目だけにとどまらないことは勿論ご存知ですよね?
 たとえば、ポピュラーな段飾りの配置は日本の屋敷の構造を模しており、最上段のお内裏様・お雛様(以下、内裏雛)は来賓として通された最奥にあたります。内裏雛のお傍でお酌を担う三人官女、華やかな音楽を奏でる五人囃子、そして座敷の戸前で護衛として待機する右大臣・左大臣…といったように、屋敷の中から外という視点で覚えると、雛壇に並べる時も思い出しやすいですね。
 また、左右の配置も最上段から見た向きで決まっていますが、地域によっては内裏雛自体の配置が左右異なる場合もあるため、飾り方はその都度多様となっています。
 このように、ひなまつりの由来を知ることで、行事をより深く楽しめるのではないでしょうか?そこで今回は、ひなまつりにまつわる歴史や文化を取り上げた本をご紹介したいと思います。


・『ひなまつりにおひなさまをかざるわけ』(瀬尾七重/著 岡本順/絵)
 ひなまつりはもともと、平安時代の「流し雛」の風習に由来しています。流し雛とは、紙や草で作った人形に厄を託して川に流し、子どもの健康と成長を願う行事です。
 この絵本は、病にかかった妹を懸命に看病する兄が、桃の木の枝で作った人形を通じて不思議な体験をし、それがやがて「流し雛」の風習として受け継がれていった、という物語です。静かに役目を果たす人形の存在が、切なくも温かい余韻を残します。ぜひ、ページをめくりながらその空気感を味わってみて下さい。


・『ひなまつりセブン』(もりしたいづみ/著 ふくだいわお/絵)
 ヒーローなのにおっちょこちょい!楽しいひなまつりの日に空からやってきたのは「ひなまつりセブン」!でも男の子のしゅうへい君は、ひなまつりにあまり乗り気ではないようで…?
 こちらはひなまつりの由来だけでなく、各人形の役割やこの日に食べる物の理由などもコミカルに紹介されており、男の子も女の子も一緒にひなまつりを楽しめる内容となっています!本作をはじめとした「セブンの行事えほんシリーズ」は、様々な年中行事の知識や楽しさを盛り込んだユニークな作風が特徴です。すごろくや折り紙など、毎巻で行事の特色に沿った付録が封入されているので、絵本で学んだ知識を思い出しながら遊ぶのもいいかもしれませんね。


・『遠まわりする雛』(米澤穂信/著)
 過去に『氷菓』というタイトルでアニメ化もされた「古典部シリーズ」の短編集です。廃部寸前の「古典部」という部活に入部した男女4人が、日常や学校生活に隠された謎に挑む青春ミステリーシリーズとなっています。
 表題作『遠まわりする雛』の中で登場する行事「生き雛」は、岐阜県の飛騨一宮水無神社の4月の祭典「生きびな祭り」がモデルとして描かれています(著者も岐阜出身とのこと!)。旧暦にあわせたひと月遅れのひなまつり、平安装束を身に纏い「おひなさま」に扮した祭行列が、表参道から境内まで練り歩く艶やかな祭典とされています。作中ではヒロインが雛役、主人公が傘持ち役を担っており、祭典の賑やかさに加え、十二単の色彩とそれらを引き立てる自然の美しさが地の文から丁寧に伝わってくる点も印象的です。


 また、現在大館市内では「鳥潟会館」(~3月2日まで)や「大館郷土博物館」(~3月5日まで)にて、毎年恒例の『おひなさま展』が開催されています。段飾りだけでなく、押絵雛や折紙雛、吊るし飾りなど色々な雛人形が展示されています。期間中、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?(田代 麻)