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9月に入ってあちこちで敬老会が開かれています。皆さまのますますの健康長寿をお祈り申し上げます。
栗盛記念図書館は今月、「100ものがたり」のテーマで展示を開催しています。最近、年齢がタイトルに入った本が増えているように思います。○歳までにしておきたいこと、○歳からはこれをしなさい、○歳からはこれをやめなさい、○歳の壁、などなど。試みにタイトルまたはサブタイトルに「100歳」とついている本を検索すると、大館市内の図書館には90冊近くあることがわかりました。
さらに100歳前後を年齢別で調べると、ダントツに多いのが100歳でした。最高齢は108歳、以下ほぼ1歳刻みで90歳まで確認できます(89歳以下は調べきれませんでした)。それぞれのタイトルを眺めると、健康に過ごすこと、充実した毎日を送ることに関心が強いことがうかがえます。
長生きの秘訣はまず食べるものから、と思い、『ニッポンの長寿食』を手に取ってみました。この本は、地元で長く食べられているものこそが長寿食、というコンセプトで県別に料理や食材が紹介されています。秋田県で取り上げられているのは5品。きりたんぽ、秋田ふき、はたはた寿司、じゅんさい、いぶりがっこです。ビタミンが多いとか、消化に良いとか、体に良い点を解説しているのがポイントです。
100「歳」に注目されがちですが、テーマ展示はそれに限りません。今年は昭和でいえば100年にあたります。多くの人が昭和のある時期に思い出があるのではないでしょうか。『昭和100年懐かしの情景』という本があります。自分では体験していないのに、何となく懐かしく感じられる写真が満載です。実際に見たことがある、使ったことがある、という人にはなおさら懐かしく感じられると思います。
そして、この100年、どんな本が読まれてきたのか。『百年の誤読』は、ベストセラーとなった本を年代別に取り上げ、対談形式で容赦なく批評を展開します。著名な本がこき下ろされる一方で、短期間で埋もれてしまった本を再評価します。出版は2004年なので、再び対談があるとしたら、この20年間のどんな本が俎上に載せられるか興味深いですね。
ここで、敬老の日にちなみ、すてきなおばあさんの出てくる絵本を紹介します。松谷みよ子さん・瀬川康男さんの『やまんばのにしき』です。やまんばが住んでいるといわれる「ちょうふくやま」のふもとでは、ある晩嵐の中から、「やまんばが こども うんだで、もち ついて こう。ついてこねば、人も うまも みな くいころすどお」と怖ろしげな声がしました。
翌朝、村人たちは青くなって餅をついたものの、届けに行く者が決まりません。そこへ「あかざばんば」と呼ばれるおばあさんが、自分が届けに行くと名乗りを上げます。頼りにならない若者ふたりを荷物もちにして、「いこうと おもえば、みちなんぞ いくらも あるもんだ。」と出立しました。
道中、気味の悪い風に襲われても「なんでもねえと おもえば、なんでもねえもんだ。さあさあ、げんきを だして、いくべ いくべ。」とふたりを励まし、結局ふたりに逃げ出されても、意を決して、やまんばのもとに向かいます。絵の朱色がとても印象的で、餅がおいしそうです。
引用したせりふで「なんだか東北ぽい」と思われた方もあるかもしれませんが、この絵本は秋田県に伝わる民話がもとになっています。後書きには、秋田県内の民話を集めた今村義孝さん泰子さん夫婦がまとめた『秋田むがしこ』に収められているとありました。
『秋田むがしこ』で確認すると、旧南外村で当時75歳の人が語ったお話でした。あらためて調べてみると、この語り手、堀井徳五郎さんは、子どもの頃おばあさんの語る昔話が好きだったそうで、長じて昔話の保存に尽力しました。大仙市では堀井さんが語るテープが保管されているそうです(大仙市ホームページなどによる)。強くて気立てのよいおばあさんのお話が、祖母から孫へ語り伝えられて、さらにその先の世代にも読み継がれているとは、なんともすてきなことではありませんか。
※文中に登場した本はいずれも大館市内の図書館で所蔵しています。お気軽にお問い合わせください。
(栗盛・田村)
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