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何を書こうかと悩んでいて、ふと3月27日は何の日かと調べてみたらさくらの日なんだそうです。例年3月下旬は多くの地域で桜の開花時期を迎えることと【3×9(さくら)= 27】の語呂合わせ、七十二候の「桜始開」から日本さくらの会が制定したそうです。それならば桜にまつわるお話をいくつか紹介しましょう。個人的には桜には怪談や怪異がつきものと思っておりますので、若干怪談が多いかもしれませんが、ご了承ください。
✿文学作品
まずは梶井基次郎の『桜の樹の下には』です。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」で始まるこの作品。中身は知らなくてもこの一文だけは知っている人も多いのではないでしょうか。陰鬱さと人間の狂気も感じられるこの作品には、美しい桜への得体のしれない不安といった感情が投影されているのかもしれません。続いては坂口安吾の『桜の森の満開の下』です。山賊とその女房となった美しくも残酷な女との怪奇物語です。この作品での桜は孤独と恐怖の象徴のように描かれています。こちらは乙女の本棚シリーズでも刊行されており、作品とともに美しいイラストも楽しめます。
✿桜と怪談
まずは小泉八雲の『怪談』より「十六桜」「乳母桜」です。十六桜では旧暦一月十六日に咲くという桜にまつわる言い伝えが、乳母桜は主家の一人娘への乳母の献身が書かれていて、どちらも人の願いや命の美しさと切なさの詰まったお話です。続いては小野不由美の『鬼談百景』最後のお話「花簾」です。とある夜に神社の境内の一角にある枝垂桜の下を通りかかると、桜の作る簾の向こうにいたのは…。日常と異界は隣りあわせ。ゾッとするけれど美しくどこか切ない、そんな作品です。
✿ほっこり?
まずは児童書『怪談十二か月 春』から。こちらに三つ桜のお話が載っていますがその中から「長屋の花見」を紹介します。明治のころ東京へ上京したばかりの学生が花見の席で眠ってしまい、目が覚めると自分を心配する影が。けれどそれはどこか落語の中から抜け出してきたような光景で…。次は、畠中恵のしゃばけシリーズ『ちんぷんかん』より「はるがいくよ」。長崎屋の離れに植えられた桜の大木から遣わされた花びらの精・小紅と若だんなの一瞬の邂逅を描いた物語です。人の何倍もの早さで成長する小紅の時間を何とか止めようと奮闘する若だんな。時の流れの残酷さと愛おしさが感じられるそんなお話です。
いろいろと桜の登場するお話を紹介しましたが、美しいものから切ないもの、狂気を感じさせるものまで幅広い作品があります。それだけ桜には見る人によって様々な感情を呼び起こさせる魅力があるのかもしれません。桜には魔物でも棲んでいるのでしょうか、と思ってしまいます。紹介した作品のなかでは私は「花簾」が一番好きなお話です。一度でいいのでお目にかかってみたいものです。皆さまの好きな桜のお話はどのようなものでしょうか。機会がありましたらご紹介ください。花矢図書館のそばを流れる川沿いには200メートルほどですが、桜が植えられており満開になるとなかなかです。花の時期には一度遊びにいらしてください。
(花矢 藤)
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