『9・11は谷啓を偲びながら』(2015/09/11掲載)
✿無料提供は大盛況
中央図書館で9月5日(土)から『雑誌・古本プレゼント』を始めたところ例年にない人気で、用意した図書数百冊は初日でなくなってしまいました。昨年と一昨年は雑誌だけだったので、やっぱり古本市とか好きな人は多いんだなぁと再認識した次第です。ちなみに古本と銘うってはいましたが、用意した本は新し目の本も混じっていました。寄贈を受けた本で寄贈者に扱いを一任された本のうち、既に図書館が所蔵していたり図書館の資料収集基準にそぐわないなど、図書館に置かない(置けない)ものを放出したものです。
実は図書館の蔵書は毎年一定数が廃棄されています。書庫が満杯状態なので、新しい本を置くためには利用されなくなった本を組織的に処分しないといけないのです。ただ、年配の方が見たら若い頃に読んで感銘を受けた本などが混じっていることも大いにあり得ます。だから廃棄本もプレゼントしてもいいと個人的には思っています。公の財産なので公平原則に従うのは当然ですが、誰でも無料で差し上げますということだったら問題はないと思うのです。実際、多くの公共図書館で廃棄本のプレゼントを行なっていますし、本にとっても寿命が延びることになります。ということで今いろいろ調査中です。廃棄本プレゼントについてご意見がありましたら、図書館までぜひお寄せください。
✿返し忘れていませんか
アメリカのある図書館に何十年も前に貸し出された本が返却されたというニュースを見たのはいつだったか。こういう時はグーグルが手っ取り早い、一昨年でした。オハイオ州シャンペイン郡の図書館に、返却期限から41年遅れで返却された1冊の本。それには謝罪の手紙と延滞金が添えられていたといいます。同封の延滞金は1日2セントで299ドル30セント。美談、なのでしょうね。
アメリカの公共図書館で今も延滞金を課されるのかどうかわかりませんが、現代の日本の公立図書館で延滞金を要求されることはありません。それに図書館警察(※)もまだ法制化されていないので、武装した警察官が本を取り返しに行くこともありません。
でも、返却期限を過ぎた本を図書館が忘れることはありません。一定の日数が経つと、決まりに則って電話をしたり、督促(とくそく)状を送ったり、直接訪ねていったりと、返してくれるまでしつこく迫りますが、1冊1冊が公の財産ですのでどうか悪しからず。というか、そういった雑務に労力とお金をかけるのは図書館としてまことに不本意なのです。なにはともあれ、借りた本は返してください。
※念のため付け加えますが、図書館警察というのは小説の世界の話ですから。興味のある方は、スティーヴン・キングの『図書館警察』(文藝春秋、1996年発行、中央・花矢・田代図書館所蔵)、森見登見彦『四畳半神話体系』(太田出版、2005年、比内図書館所蔵)をどうぞ。
✿密かにいなくなる本も
図書館の本が、正規に貸し出し手続きを行なってルールに則って貸し出される以外に「こっそり黙って持ち出される」ことも全くないわけではありません。確信犯でこれをやるのは明らかに窃盗ですからね。
悪意はなくとも、「うっかり」とか「知らずに」同じことをしてしまうこともあり得ます。たとえば図書館を初めて利用した人が、利用カードの存在も知らず、しかし無料で借りられることは知っていて、カウンターを通さずに本を持ち出す可能性はあるでしょう。
問題はそうして本がいなくなったことが、なかなか気づかれにくいということです。今はICタグが主流ですが最新の図書管理システムを導入すれば、セキュリティの精度は向上します。それだけでなく貸し出しや返却、蔵書点検なども大幅な効率化・省力化が可能になります。ただ、技術が日進月歩で陳腐化も早いのが難点で、予算に恵まれない図書館は様子見するしかありません。
ところで、このところ貸し出した記録のない本が返却ボックスに入っていることが何度か続きました。こういうとき図書館が犯人(?)探しをすることはありません、絶対に。ということで、もし家の中に図書館の本を見つけたら、ぜひ閉館中入口に置いている返却ボックスに返してください。もちろんカウンターに返してくれても構いませんよ。たぶん図書館員は「ありがとうございました」と言うはずです。 (陽)
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