『梅原デザインに大注目』(2016/02/12掲載)
✿三日月は三日目の月
一昨日10日の午後5時半頃、陽が落ちた西の空にきれいな三日月が。見とれながら、つい数日前読んだ本に月の上弦下弦の見分け方が書かれていたことを思い出しました。教科書的に上弦というのは、月を弓に例えて、つまり光っている部分を弓本体になぞらえてそれに弦を張った場合、弦が上に来る場合をいいます。下弦は当然ながらその反対。ところがこの理解だと、実際に月を見る場合に迷うことがあります。
太陽も星も月も、天空を見かけ上は弧を描いて進みます。すると、たとえば星座をみる場合時間によって、言葉を変えると空のどの位置にあるかによって、右肩上がりだと思っていたのが右肩下がりに見えるなんてことがあります。月も同じように、細く光る月が上方に傾いて見えていたのに、同じ夜でも時間がたつと下方に見えることがあるのです。上弦なのに下弦、下弦なのに上弦のように見える場合があるというわけです。では上弦下弦を間違えないで済む方法はというと、向かって右側が輝いているときは上弦、左のときが下弦と覚えると間違えないですみます。もしかして誰でも知っていることなのかも、と心配しながら書いています。ヘエと思ってくれる人がいますように。
家に帰ってから旧暦も書かれているカレンダーを見たら、10日は旧1月3日でした。文字通りの三日月だったんですね。
ちなみに私は冬の夜空を見上げるときは真っ先にオリオン座を探します。いつ起こっても不思議ではないといわれるペテルギウスの超新星爆発はまだか、ということで。オリオン座のみごとな形が崩れるのはもったいないとは思うのですが、さぞかし見ものだろう超新星爆発を、生きているうちに見たいものじゃないですか。
✿ことばの西・東
前項のつい数日前読んだ本というのは、呉智英(くれ・ともふさ)著『ロゴスの名はロゴス』(メディア・ファクトリー、1999年)。花矢図書館所蔵です。この手の、言葉に関して蒙(もう)を啓(ひら)いてくれる本が好きなのですが、読み物としての面白さで、呉氏は好きな著者の一人です。この本からひとつ紹介すると、「東日本の訓読みと西日本の訓読み」と題した章。冒頭著者からの問題があります。皆さんも考えてみてください。
【問】「谷」の音読みを書け。
訓読みは「たに」だから……と考えて、「や」と答えた方が多いのではないでしょうか。私もでした。でも正解は「こく」。渓谷、大峡谷の「こく」ですからこれは納得ですね。そして「や」は訓読みなのだそうです。ただ、訓読みはそれだけで意味が通じる読み方、音読みは聞いただけでは字が浮かばない読み方というのが一般的な理解ですから、「や」が音読みでないと言われても納得しがたいものがありますね。「や」は珍しく単独で使われることのない、しかもほぼ地名にしか使われない訓読みなのです。それも、東日本に片寄っています。
渋谷、四谷、谷中、世田谷、深谷、保土ヶ谷、宗谷、塩谷、それに大館市立中央図書館の住所である谷地町を含めても、思いつくのは東日本の地名ばかりです。「や」はアイヌ語起源説が有力で、崖や陸、湿地帯を意味します。対して関西以西では黒谷、鹿ケ谷、一の谷、真宗大谷派など「たに」ばかりになります。言葉が文化圏の違いを示す指標になる良い例です。
✿梅原デザインはまっすぐだ
1月30日の本紙に、大館市が観光キャッチコピーを「大館というところ。」に決めたという記事が載っていました。「あ、いい感じ。」というのが私の第一印象です。アタマから無理やり何かを強く訴えるのでなく、次のことば・内容にすっと繋げていける自然さと汎用性が気に入りました。
記事を読むと、おお、梅原真さんのコピーなのですね。いま、日本で最も気になるデザイナーのひとり、というか一番気になるデザイナーじゃないですか。記事中の無償提供されたというのは正直どうかとも思いますが、なにはともあれ大館市に良い風が吹くことを祈ります。
中央図書館では梅原真さんの著書を全部注文しているところです。3冊ですけどね。無事に入ったら県立図書館より1冊多いと自慢しようと思います。到着まで今しばらくお待ちください。いい本ですよ。 (陽)
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